中高生のための内田樹 その9 - 国語屋稼業の戯言

●日本の近代化は特殊です。また、葛藤という単語はぜひ中高生は知っておいてほしい単語です。そのあたりを理解してほしく、次の文章をえらびました。

 

 「明治人」とは「明治生まれの人間」を意味しない。そうではなくて、「明治的」な人間のことである。

 「明治的」というのはどういうことかというと、「明治維新」というトラウマ的経験に苦しんだという原事実がある、ということである。

 西郷隆盛の生年は文政10年(1827)、大久保利通天保元年(1830)、坂本竜馬天保6年(1835)、高杉晋作天保10年(1839)。

彼らは明治の日本の基礎を築いたが、「明治人」ではない(坂本と高杉は維新前に死んでいるし)。

 夏目漱石森鴎外が代表的明治人である。

 ただし、漱石慶應三年(1867)生まれ、森鴎外文久二年(1862)生まれである。

 「明治人」のエートスをかたちづくったのは間違いなく明治維新である。旧時代の制度文物を棄て、西欧をモデルとした近代国家を立ち上げるという事業は、その時代の人々にとって、ほとんど自分の半身を切り裂くような痛みを伴ったはずである。

 日本人である自己の半身を否定するような「近代化」の痛みを受け止め、半身から血を滴らせながらも生き延びた、その葛藤のうちに明治人の深みと奥行きは存する。

注 エートスethos  ある文化などの本質的な特性、精神のこと。また、ある民族や社会などの習慣や風俗のこと。

問 日本人である自己の半身を否定するような「近代化」とは何か?

【解答例】

明治維新を境に過去の日本と断絶し、西欧をモデルとした、新しい日本をつくっていくということ。

現代文重要単語

    

葛藤

《葛?(かずら)?や藤?(ふじ)?のこと。枝がもつれ絡むところから》

1 人と人が互いに譲らず対立し、いがみ合うこと。「親子の葛藤」 

2 心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、そのいずれをとるか迷うこと。「義理と人情とのあいだで葛藤する」

※対比を前提にした単語なので重要。

 

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